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ミャンマーと呼ばれる世界(2) ビルマ編Ⅱ

 

 こんにちは!森本です。寒さが厳しく、粉雪ちらついた二月が過ぎ去りて、卒業式の季節である三月が到来しました。時の流れの早さを実感する今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 

 

 前回のブログでは、ミャンマーを『世界』としてとらえているミャンマー人がいること、私が持っている「主要民族」・「少数民族」という認識が、地域によって通用しない場合があることなどを話をしました。

 

 

 読んで理解できた!という方は…、なるほど、とてもさえた頭の持ち主と見ました。

 

 

 さて、今回から本格的に地域紹介に移っていきたいと思います。「ビルマ編」と題名での賜っておきながら、前回のブログで「ビルマ」のことを前半の数行しか扱わず、「タイトル詐欺」まがいな行為をしてしまったことを改めまして…。

 

 

 

 

ビルマ世界

 

 

 そもそもミャンマーは、大きく分けて8個の地域に分けられます。

 

 それぞれ…

 

   ビルマ

  ・モン

  ・カレン

  ・カヤー

  ・シャン

  ・カチン

  ・チン

  ・ヤカイン

                                 と呼ばれています。

 

 このうちのいくつかを紹介していきたいと思います。

 

 ビルマ世界がどこを指すのかと言いますと…、

 

 

 緑色の線で囲われたミャンマーの国土の中で、このオレンジの線でさらに囲われている部分を指します。ミャンマーという国の中では、かなり大きな地域になっております。

 また、土地面積が他の地域と比べてかなり広いだけではなく、そこに住む人々も、「主要民族」の名を関するだけにかなりの人口を誇っています。

 

 では、このビルマという地域内は、どのようになっているのでしょうか。どのような言語が話され、どのような人種がいて、どのような文化があるのでしょうか。早速、見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.言語と文学

 

 

 ビルマ世界で主に使用されている言語は、その地域の名前通り、ビルマ語です。ミャンマー語とも呼ばれますが、このブログではビルマ語と称しておきます。

 ミャンマーの公用語として設定されており、他地域に居住し、母語の異なる他民族は、母語と一緒にビルマ語も使用して日常会話を成り立たせています。

 

 ビルマ語に関する情報は、こちらのブログ「ビルマ語ってどんな言語?①~文学編~」・「ビルマ語ってどんな言語?②~文法編~」で取り扱っておりますので、興味を持たれた方はそちらもご覧ください。

 

 簡単にまとめますと、ビルマ文字のアルファベットは33文字あり、11世紀後半から12世紀初頭にかけて、モン文字を借用して作られた文字です。

 

 

 こちらがそのビルマ語式アルファベット表です。日本語にも、英語にもなじみのない、うねうねした形状が特徴的です。

 

 

                    画像(1)

 

 こちらは壁画ではありません、宝くじの当選番号を掲載している掲示板の写真です。かなり古めの写真ですが、うねうねしたビルマ語が、ビルマ世界内で日常的に、どのように表記されているのかを見て取れると思います。

 (日本人の我々からすると、かなり見づらく、読みにくいと思いますが…。)

 

 ビルマ世界では、このようなビルマ言語を頻繁に使用しているのです。

 

 

 

 

 そして、ビルマ文字を使用して作られる文学も特徴的です。

 

 後ほど紹介しますが、ビルマ世界の宗教は主に、仏教です。それ故に、ミャンマーではなく、まだパガンと呼ばれた13世紀から、今の今まで仏教関連の文学作品が数多く出版されています。

 

 男女八人は輪廻転生を繰り返し、阿羅漢になるまでの道程を描いた「彼岸道物語」(1511年)と言われる作品は、特にその仏教的要素を取り入れた作品だと言えるでしょう。仏教はテーマに基づいて再度解釈・翻訳されて「称誉増大物語」(1618年)「ルビーの耳輪物語」(1619年)といった、再解釈本が出版されることも多々ありました。出家からの輪廻転生、悟り、という要素が、ミャンマーの仏教的物語には欠かせない要素となっているのです。

 

 ※阿羅漢→初期仏教などで、一切の煩悩(ぼんのう)を断ち生死を離れた、仏教修行の最高段階。    

      また、そこに達した人のこと。

 

 また仏教的物語以外にも、民族愛を描いた「わが母」(1935年)、現代の迷妄な仏教徒を描く「進歩僧」(1937年)、性病問題を描いた「現代の悪霊」・「ストライキ学生」(1938年)など、ミャンマ―文学=仏教関連の書物というわけではなく、雑多な文学が今まで作られてきました。

 

 

 加えて、日本同様に古本屋も存在しています。

 

 

                画像(2)

 

 

 

                画像(3)

 

 

 

 こちらもかなり古い写真となっていますが、日本の神保町並み、もしくはそれ以上の古本が立ち並んでいます。特に一枚目の写真はお寺の参道に設置された古本屋であり、先程述べた書物と仏教の関連が、立地場所からも伝わってきます。

 

 

 ミャンマ―文学 ≠ 仏教文学であるのは間違いないですが、仏教徒はミャンマー文学を成り立たせる要素であり、宗教が関連している作品が目立つのもまた事実です。

 

 

 

 

2.宗教

 

 

 続いては、宗教です。

 

 文学を記述する際に少し紹介しましたが、ビルマ世界内での主な宗教は仏教です。ビルマ語で宗教を意味する単語は、「バーダーウェイ」というのですが、「バーダーウェイ」はキリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教、もちろん仏教のことも含まれます。

 

 本来「宗教」を意味するこの単語なのですが、ビルマ世界内では「仏教」を指して用いられることが多いのです。文学からも、日常会話からもミャンマーが「仏教」に対して厚い信仰心を持ち、かつ「仏教」を日常の一部として無意識に取り入れていることが分かります。

 

 

 

        修行僧の数も多く、若くから仏教の道へ入る少年少女もいます。

 

 

 

 

 

 

 また、日常的に宗教実践を行っている点でも、ビルマ世界内で仏教が熱く信仰されていることが分かります。

 

 皆様の家に、お仏壇はありますでしょうか。おそらく、無い家庭がほとんどだと思います。お仏壇は高価なものですし、仮に購入したとて、設置する場所もなければ拝礼する習慣もない、のが大半の人が抱く感想でしょう。

 

 ですが、ビルマ世界のビルマ族仏教徒にとって、仏壇は必要不可欠なものであり、今空間に余裕がある場合は仏間として別個に部屋を設けたり、客間の一角に置かれます。

 仏壇には花・ごはん・果物といった捧げものが供えられ、家事を切り盛りする人間が花や果物を欠かさないように絶えず気を配り、前中にはご飯を小さな器に盛って捧げます。

 

 

 

【補足】死生観

 

 

 宗教に関連して、死生観も一緒に紹介します。

 

 ビルマ世界、ビルマ族の死生観は、輪廻転生を核とする仏教的世界観を基礎としつつも、魂や悪霊などのビルマ民族的思想も盛り込まれています。

 

 

 人が亡くなった場合、日本では死亡理由書を記入した後で、死体安置所に運び、速やかに火葬して葬式を行います。

 ビルマ世界でも、流れは同じですが細かい部分を見ると違いが見えてきます。遺体を洗浄し生前来ていた服を着せ、村落部では家の「後部」から運び出して、村や地域共同体の西側に置かれた墓地に埋めるのです。

 伝統的には、墓そのものはさほど重要ではなく、墓碑も立てない場合が多い点も、古代より古墳だの塚だの、豪華な墓を建ててきた日本とは異なる部分だと言えるでしょう。

 

 

 

3.民族

 

 

 さて、ここまで言語・文学・宗教・死生観について語ってきましたが、今度は民族・芸能について話していきたいと思います。民族の話は前回のブログで記述したとおり、非常に複雑で難しいため、今回は端的に要点を述べていきたいと思います。

 

 ビルマ世界内の主な民族は、ビルマ族です。ビルマ族はミャンマー国内の総人口の、七割を占めており、「主要民族」という部類に入る民族です。

 ビルマ族の他にも、チン族やカレン族などといった、人口数では「少数」の部類に入る様々な民族も存在します。

 

 元々、中国や雲南地方に居住していたのですが、9世紀ごろにミャンマー、ビルマ世界に移り住みました。

 

 ミャンマー周辺の仏教文化やインドの文化などを多く吸収しており、男性は一生に一度お寺に入るのが社会的習慣となっているなど、文学よろしく仏教的な要素が根幹に存在する民族となっています。

 

4.芸能

 

 最後に、芸能の紹介をしていきましょう。

 

 ビルマ世界内には無数の芸能が存在しています。その中で「糸あやつり人形」という芸能に焦点を当てて語っていきます。

 

 

 糸あやつり人形とは、言葉通りに糸で操る人形劇です。日本でいうところの「人形浄瑠璃」と少しだけ似ているかもしれません。

 期限に関しても定かではなく、1484年に書かれた詩に「糸あやつり人形」の記述があることから、15世紀にはすでに芸能として成り立っていたとされています。

 

 

 

 

画像(4)

 

 

 

画像(5)

 

 

 

 

 精巧につくられた人形を糸で操り、時には人間と共演させる、という独特な芸風が特徴的です。

 

 王国時代には、王の命令によってつくられたあやつり人形団、王女の意によってつくられた劇団、一般的な劇団などがあり、それぞれレベルや特権が異なりました。優れた芸術家には領地などが与えられました。

 

 登場するのは28種類の人形たちで、王女・王子・鬼・虎などユニークな人形が舞台に上がります。また、衣装や装飾も非常に細かく丁寧に作られており、観衆の目を引くポイントとなっています。

 

 精巧な装飾と巧みな人形術、時に演奏などが盛り込まれるこの「糸あやつり人形」は、子供から大人まで遍くビルマ世界の人々に愛されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の内容はここまでとなります。

 詳しく、というより端的に要点をまとめてお伝えしました。

 

 

 ビルマ編いかがだったでしょうか。

 

 

 持っていたイメージと、同じだったでしょうか。全然違うものだったでしょうか。

 

 このブログを通して、地方の様子や文化も含め、ミャンマーに対して興味を抱いていただけたら幸いです。

 

 

 

 森本

 

 

 

【引用元】

 

・画像(1):「ミャンマー概説」伊東利勝 編  p115 図8

・画像(2):「ミャンマー概説」伊東利勝 編  p126 図10

画像(3):「ミャンマー概説」伊東利勝 編  p127 図11

画像(4):「ミャンマー概説」伊東利勝 編  p167 図27

画像(5):「ミャンマー概説」伊東利勝 編  p167 図28