【理事長の徒然】在日外国人宅スタディツアーを実施した感想

読者の皆様、このブログ記事までたどり着いていただき、ありがとうございます。

NPOリンクトゥミャンマーという小さなNPOを運営しております、理事長の深山沙衣子(みやま さえこ)と申します。

 

なぜNPOの理事長をやっているかというと、このリンクトゥミャンマー(ミャンマーとつながるの意)という団体を作った張本人であるからで、NPOを設立したときは、在日ミャンマー人の定住支援というニーズが私の周辺にたくさんありましたので、その業務をやっていただく方を募ろうと、単純に考えるのみで、組織化してしまいました。

 

それから、様々な方々が事務局やボランティアとしてかかわるようになり、在日ミャンマー人への定住支援も、何とか、理事長本人以外の人に任せる機会が出てきた感じで、業務分業体制を構築しようと躍起になりつつ、2021年の3月を迎えております。

 

今、「ミャンマー」と言いますと、日本社会でも2021年2月1日に起きたミャンマーでのクーデターの話題に席巻されております。

 

そもそもなぜ、ミャンマーでクーデターが起きるのかという話は、RFA(ラジオフリーアジア)やVOA(ボイスオブアメリカ)などのベテランのミャンマー人ジャーナリストが実に面白い話をしておりますので、彼らに論を譲ります。

 

が、在日ミャンマー人が日本に来て、難民となったり、出稼ぎのために働くのは、そもそも国家として国民を自国内で稼がせるのには、経済・教育・雇用・政治体制が弱体であるという要因があります。しかし今の日本に生まれて長く育ちますと、実は強権的だったり経済体制が弱い国のほうが世界の中では多いという事実が頭の中に入りません。

 

私もかつてはそうでしたが、日本に住み続けると、世界の貧困格差の絶対的な体感が不足します。よって、まじめな性格の方ほど、何のために働くか、何のために生きるか、という人生哲学の解を見つけたいと思うでしょう。特に最近の20代から40代の方に、そうした問いを追い続ける姿を見たりします。

 

そこで、私ができることを考えました。発展途上国の人や、そこで生まれた人の暮らしぶり、日本とミャンマーの接点を、NPOメンバーで共有し、若い世代(私、もう40代ですから)に伝えて、これからの社会形成の一助にしていただけたら、と思ったのです。

 

あと5年から10年で、私が生まれ育った「日本」の景色は、外国人の社会参画や人口動態、自国経済の限界、世界における地政学のパワーバランスなどに影響されて、大幅に変わる気がします。

その激動を生きる方々に、社会の変化の息吹である現状をお見せするのが、わずかばかりの社会貢献ではないかと思った次第です。

前置きが長かったですが、2021年3月、神奈川県に住むミャンマー人のお宅に行きました。

 

彼は、私のミャンマー人夫が10年以上前から知っている後輩で、夫は住居確保の支援などを行ってきました。私が夫と結婚してから、単身で日本にいた彼がご家族を日本に呼び寄せることを決め、ビザ申請の書類を整える支援を私が行いました。そのとき、まだNPOリンクトゥミャンマーはできていませんでした。行政書士が何を行うかも知らなかった私に、彼が様々な入管書類の知識をむりやり勉強する機会を与えてくれたとも言えます。

 

これは余談ですが、その後も彼は困っている自分の仲間をどんどん私に紹介して、私はミャンマー人の仕事を探すのを経営する会社のサービスメニューに入れなければならなくなり、ビザ申請支援も数多く経験しました。

 

ミャンマー人の中で、マイホームを持つ人は出てきていますが、まだ数多くありません。彼らがマイホームを購入したのは、日本での定住がうまくいっている成功の証と言えます。

 

彼らのご自宅が思った以上に空気が澄んでいました。

 

「家」は、そこに住む人々を具現化する場所です。彼ら夫婦は、あまり汚れた考えを頭に入れない人々です。様々な外国人がいるコミュニティ内で、いつもニュートラルでいる彼らの姿勢が家の空気になっていて、それがビザ更新や子どもの進学、マイホーム購入など日本での定住がうまくいくことに影響しているのでは、と輪廻や功徳やカルマを信じる者として、感じたことです。

 

同じ地域に、異文化の人々が住むのは、難しい場面もたくさんあります。ニューカマーはその地域に住む既存の人々の意向に合わせなければならない、というのが、かつても今も日本社会にはたくさんあります。

 

一方で、既存の人々とニューカマーがいい具合に交流して、お互いを刺激しあって社会を活性化させるという、双方向の働きかけが、そろそろあってもいい、と個人的には思います。

 

 

「意外に豊かな生活を送っているんだな、と思いました」

とNPOリンクトゥミャンマーのインターンの方がこの「在日外国人宅スタディツアー」を終えて、感想を述べていました。

 

そうです。意外に豊かな外国人も、結構いるのです。

 

ものすごく雑然とした部屋に住む外国人の様子を見るのもスタディですが、移民として来日し、日本人と同じような生活水準となって生きる外国人も存在します。今、そこにある日本の移民の様子を、ありのままに見るスタディをして、私も「自分の家を整理しないとな」と反省しました。

 

否、本来はミャンマーを訪れるスタディツアーをやりたかったですが、新型コロナウイルスとクーデターの影響で、現状では実現が難しいです。しかし日本での在日外国人宅スタディツアーも、異文化交流や今後の日本社会の「グランドデザイン」(←日本政府が結構好きな言葉)を描く材料を提供する意味では、意義があるのではないでしょうか。

 

(2021年3月8日 みやま さえこ)